【奈緒side】

「きゃあー!! 見て、海翔君だよっ!!」
「超カッコよくね~!!」
 
 学校の帰り道。海翔を見て騒いでいる。
 この光景は珍しくはない。
 そして私は、この光景には嫉妬したことなんてない。
 だって…

「うっせーんだよ!! 黙れ、ブス」
 
 ほらね。そう言って他の子なんて見ない…はず。
 ヤンキーだから口調がキツい。

「な、何よ…」
「もう、行こう」
 
 女の子たちが帰って行く。

「海翔。女の子にあんなキツい言い方したらダメだよ…」
 
 自分でも分からないが、あの子たちのフォローに回った。

「あぁ、じゃあ、アイツらに笑顔で手、振れって言いたいのかよ?」
「そう言いたいんじゃなくてね、優しく言ってあげようよ。って言いたいの」
「んなの、奈緒にだけで良いじゃん」
「…///」
 
 不意打ち。ズルい。
 だって、あの子たちのフォローに回ったのは…もし、私が海翔の彼女じゃなかったら、ああやって言われると思うと…嫌で、フォローに回ったの…。
 気付けば私は涙を流していた。私は海翔に気付かれないように、下を向いて涙が乾くのを待っていた。

「…おい、何、下向いてんだよ?」
「っ何でもないよ!」
「…奈緒」
 
 ドキッ…。名前を呼ばれただけで、ときめいちゃう。

「な…何?」
「何、泣いてんだよ…?」
「!!」
 
 ヤバい、気付かれた!!言い訳しなくちゃ。

「えっーと……あっ!あくびで!! 涙が止まんなくてさぁ~。アハハ…」
 
 グッ。海翔が私の涙を拭ってくれた。

「えっ…。」
「悪かった。…アイツらに、もうキツく言わねぇよ。だから…泣くなよ」
 
 そんな切ない顔で声で言わないでよ…。涙止まんないじゃん。

「うぅ~…」
「うわっ!だから泣くなって!」
 
 海翔は私が泣きやまないから、めっちゃ焦ってる。
 そんな姿を見てたら可愛く思えてきちゃった。
 いつの間にか涙も止まってた。

「うふふ」
「…何、笑ってんだよ?」
「ううん、何でもなーい」
「変なヤツ」
 
 そう言って微笑む海翔。何か幸せだなぁ~。
 私は海翔の事、めちゃめちゃ好きなんだなっ!!