井上真緒編

もうすぐ来るとチアキは言った。これでやっとチアキから解放されるのだ。最後に、真緒は、チアキにしつこいようだったが、あなたはこんなことをやっていて本当に幸せになれるのと聞いた。チアキは、人には境遇の違いというのがあるんだと言った。さあ、いくんだよ、あのオープンカーだといって、幸せになりなと言った。信号が赤で、すべてがとまったかのような交差点を、真緒は、そのオープンカーめがけて、走っていった。運転席にいる男は、なんやといって驚いていたが、真緒は、その男にキスをした。軽く唇を重ねただけだったが、思い切って、息を吸い込むように口を吸い込んだ。もちろん、僅かな間だった。信号も青に変わり、真緒はその場を離れていった。真緒が驚いたのは、相手が明石屋さんただったことだ。テレビで子供の頃から見ていた、明石屋さんただった。そのオープンカーを遠目に見ると、チアキが後ろの座席で、元気を取り戻したかのようにしていた。こちらをみたようにもみえたが、普通の人間の格好をしているのが不思議だった。これで、すべてが終わったのだ。しかし、チアキが元気を取り戻したのとは逆に、さんたには、不幸が訪れるのだろう。