「いいか、よく聞け・・。」

女の肩をグッと引き寄せ、
驚きの色を露にしてる顔を
真近にしてた。


「俺の前で昔の名をけして
語るな、今後、UTと呼べ。 
・・約束できるか?」


女医は眉を寄せてこくっ、こくっと
頷きズレた眼鏡の奥で俺を見つめた。

俺は不安を過ぎらせ、
問うのを躊躇する。 

だが、聞かない訳にはいかない。

座っている事にストレスを感じ、
そっと手を放してやると
思わず腰をあげていた。



「まさか、麻美に_____ 」


「あ・・・。」


事の重大さを予感したか、
俺のイラダチが見て取れたか

女医は今にも泣きそうな顔で
ゲンコツを口元に押し当てている。

云って・・しまったらしい。

ベンチに背を向けてやり場の
ない怒りを踏んだ土にガツ!と、
八つ当たりしていた。

マズイ事態だ。


「・・・・そうか。
アイツ・・もう無菌室だったな。」


「ええ、でも・・移る前に
売店へ行きたいって・・。」


「許可したのか?」

「マスクして、なるべく早く
帰って来てとは云いましたが・・。」


無菌室に入れば
当分はカンヅメ状態だからだ。