Under Tamiflu 灰色の天使

"ほぼ死神"の俺相手に
失礼だとでも思い直したんだろう。
優しい麻美の考えそうな事だ。

俺も実は
そうしてくれた方が助かる・・。

「だったら足掻いてみちゃどうだい、
ちゃんと見ててやるよ・・。」


肩を叩き、俺は窓に背も垂れて
クスリと笑う。己に笑った。

全く、俺も甘い・・。

空に、雲から覗くスポットライト
みたいな太陽の光を見つけて思う。

( いや・・これも、俺の
"ナケナシの良心"を甚振って
喜んでる"カミサマ"の陰謀なのかもな。)

だけどさ・・・
誰だって死ぬのは怖いんだ。

折角前進したものを
後退させては元も子もない。

その位のヒントをやったって
アンタ、片目ぐらい瞑れンだろ?

ま、文句があるなら
俺をこのお役目から外すこった。

フフ、大体そうするならもう
とっくにやってるだろうけど。


「足掻いて・・貴方に連れて
行かれずに済んだ人は他にいる?」


病室に戻ろうとした俺に着いても
来ないで、麻美は片手のコブシを
握り締めたままやっとそう訊ねた。

俺は多少、
残酷な答えを返したのかもしれない。


「奈津子を知っているだろう・・?」

「・・・!」