_____________ああ。


俺がはぐらかした事位、
解った筈だろう。

そりゃ、考えたくもなる。


・・・無理しやがって。

髪を切るのとはワケが違う。

本当なら、遅かれ早かれ
決断は迫られたのかもな・・。


"失礼します"とドアの外から
ナースの声がした。

ガラリ。

真っ先に入って来たのは
白髪交じりのヤッパリ偉そうな
中肉中背のオッサンで。


「こんにちは」

「具合はどうかな?」


院長と2人でお出ましだ。
新しいドクターも一緒らしい。

コチラに向かって会釈したのは
エロ医者の後任である女医。

勿論、俺は見えていない筈だ。

何ともイモクサイ感じの女で、
ヒトツに結わえた真っ黒な
ミディアムヘア。

背はフツウ、ラインもそこそこ。

"医学一筋マジメにやってきました"
・・みたいな? 雰囲気。

だが、少なくとも素行だけは
前の奴よりはダンゼン良さゲ。

俺は彼女に目配せをしてから
イスから立ち、廊下に出てった。

やっと病室中に広がる
林檎の匂いから解放された。

嫌いじゃない・・
どちらかと言えば好きな香りだ。

昔、俺が
チェーンスモーカーである事を
気に掛けてくれていた女に

磨りおろした林檎を入れた
ヨーグルトを
朝食によく食べさせられたもんだ。

"一日一個の林檎は医者いらず"

・・なんてな。

イチイチ
思い出させやがるよ、ホント・・。

そう云えば・・アイツは一体
どんな協力をしてくれるつもりなんだろう?


「・・・?」


何ゴトか・・あった様だ。