「え・・あ、ゴメン
つい・・感極まっちゃって。」

「あ、いえ・・。」


もう黒皮のジャケットを着た
死神は姿はそこにない。

UTの声が聞こえない彼は、
私の声だけに反応していた。

先生は・・本当に嬉しそうに
白衣の袖で目をゴシゴシ拭いてる。

そんなにまで・・私の事を・・?

「私・・明日、
丸坊主になるんですよ?」

美容師さんをいつ呼ぼうか? と、
看護師さんにも聞かれていた。

抗がん剤の副作用でだいぶ抜け
落ちる様になっていたが、
後三日の事だし実は迷っていた。

「ああ、そうそう。イキナリ、
お礼みたいになっちゃうけど
ひょっとしたら必要になるんじゃ
ないかと思って・・これ。」

手渡されたのは、
可愛いパッケージの箱。
中には赤と紺色の2つ、
バンダナ風になった帽子が入ってた。

それを手に私は
思わず彼を真顔で彼を見てる。

「大丈夫・・きっと、似合うよ。」

恐れを知らぬ、無邪気な笑顔を
見せるこの男に・・私はついフラリと
近づいて右手を差し出していた。

「・・・有難う。」

「どう致しまして。」

彼は私になど勿体ない・・、
まして胸に飛込むなど恐れ多い。

私には・・先生が眩し過ぎたのだ。