あーあ。来ちまったよ・・・。

線香の臭い、カラスの声、
遊び場と間違えてる子供たち・・
って・・コラッ、

此処は神聖なる墓地だぞ! 
鬼ごっこしてんじゃねえっての。

看板の記号は「E」だ。
自分の墓石の場所位、知っている。

死んでからテメエの墓を見るのは
何とも云えない気分だ。

( 墓石がまだ、湿った感じだ )

触れた御影石がぺっかぺかに
磨かれて、コケさえ着いていない。

御忍びで
やって来ては毎回こんな事を・・。

かなり忙しい身になった筈なのに
アイツは変わらない・・ん?

供えられたピンクの和紙の様な
包み紙の箱を手に取った。

大きさとしてはそうだな、
タウ○ページを半分に割った位で
平べったい。

「・・・・!」

金色に光るハートのシールの文字
を見て鼻から笑っちまった。

カカオと芳醇なチェリー酒の香りが
思い出と一緒に体全体に染み入ると
・・とても優しい気分になる。

そうか。世間ではもうそろそろ、
そんな時期だったか。

「ハッピー・ヴァレンタイン・・! 」

俺が勝ち誇ったかに
ホクソ笑んだって? まさか・・!

アイツを譲ってやった、あの色男に
「悪りィな!」って思っただけさ。