ヤツレた顔に酸素マスク、
カクテル療法の薬の副作用か
当時よりもやや浮腫んだ体・・。

ストレッチャーの上、
いろいろな線に
繋がれていて生気も窺えない。

慌しく雪崩れ込んだ看護師達も
やる事やってサァッと部屋から
引き上げていった。

・・もう、
待つだけとなったからだ。

病室に入ると
衣擦れの音さえ聞こえない、
僅かな呼吸、モニターの音。

「よう」

俺を待っていたのは
ベッドに横たわる奈津子だけではない。

振り向けば
人知れずに壁際に佇む
大カマを持つ黒装束の者。

声を掛けると無言で
軽く手を上げ挨拶しやがった。

此処に運ばせたのはどうやら
この死神らしい。

「・・・・・。」

「奈津子、俺だ」


意識が多少残ってたか、
傍に座った俺の気配を感じて
彼女のアゴが僅かに動く。

乾いた唇が開き、
窪んだ目で笑って見せた。

病気の為の痴呆もだいぶ
進んでいる筈だが
俺の事は覚えていられた様だ。