「嘆くだけなら
どんな男だってできんじゃん?」

UTは膝の上に肘を乗せ前屈みに
腕を組むと小さめの声で続ける。

「いずれ自分を置いて行く女に
好きだ、愛してるだのなんぞと・・
俺だったら絶対言えねえよ・・?」

「そう?じゃ、そう云えるのって
自己陶酔してるダケじゃない?」

昔、サンドラ・ブロックが映画の
台詞でそれに近い事を言ってた。

私がシレッとそう答えるとまるで
"そらきた"みたいな微笑み方だ。

「まして・・お前みたいに素気ない
ほどいつも、自分の死を見つめて
勝手に死ぬ覚悟を決めてる女だ。」

何気に私の話へと話をすり返られ
ちょっと納得いかないけど・・。

貴方はドコを見てるの? 何やら・・
想い深そうな表情を見せられて
つい黙って考えさせられていた。

彼の指摘する、私に告った男とは。

入院を余儀なくされて以来ずっと
寝てばかりで痛んでしまった私の
背中や腰を治療してくれてる先生。

まだとても若くて無口なヒトで・・
ナース達にも密かな人気があった。

「置いて行かれる者の苦しみが、
逝ってしまう奴に解る訳がない。
俺は逆の立場でそう思ったよ・・。」

ああ・・そうなんだ。
彼にも置いて来てしまった
ヒトがいるんだ・・。

「貴方は云わなかったの・・?」

「フフ、俺はそんなに強かねぇからナ」

またそんな・・嘘をつく・・。