やっと笑い終えた仁美は

「とりあえず、気づいてようが気づいて無かろうが、言えることは…

私達の中の何かは終わってしまったということ、でしょ?」


「…確かにな。いつの間にか、恋人じゃなくて友達に戻ってた」


「ねえ京平、私たちは嫌いあって別れるわけじゃないから…あの…都合よすぎるんだけど…」

仁美が何を言おうとしているのかはわかった。


「わかってるって。俺達は友達になる。変に避けたりしない」


「……京平は優しいよね。

こんなのずるいのに…許してくれちゃうし。私から別れを切り出させたのもワザとでしょ」


「さあ?」

俺は首をかしげる。

仁美は唇を尖らせて、少し睨んできた。


しかし腕時計に視線を落として

「おっとマズイ。本当にもう帰らなきゃ」


「送るか?」


「平気‼」

仁美は椅子から立ち上がって

「じゃあね、京平」


「…ああ」

恋人としてかわす、最後のあいさつをした。