俺は仁美に呼び出されたカフェで本を読みながら待っていた。

「お待たせ」

仁美が長い髪を掻き上げながらそう言う。

「いや、大丈夫。それで、話しって?」


「ちょっと待って」

仁美は椅子に座ってから、近くにいた店員にホワイトモカを頼んだ。


数分もするとそれは運ばれてくる。

仁美は一口飲んでから、俺をまっすぐ見つめた。

「…何もわからない、何も察してないってことは無いでしょ?」


「………まあ、な…」


「京平は、顔に出やすいから」

仁美は小さく笑った。


「ねえ京平…別れようか」


「…やっぱりな。言われると思った」

覚悟はしていた。
昨日の俺達の雰囲気で、終わっているという確信もあった。

…その証拠に、久しぶりに会ったのにキスの一つもしなかった。


「京平、何となくわかったでしょ。昨日の私の話で…」


「お前に、好きな人がいること?」


「…やっぱり、わかってた…」

仁美は少し悲しげに笑う。