俺がテレビを見ながら、うとうとし出したとき、つばさが風呂から帰ってきた。

時計を見ると、母さんがつばさに手伝ってもらいたくないあまりに追いだした時刻から一時間近く経っていた。


《結構うとうとしてたな…》

まだ少し眠いので、ソファーに横になる。

ソファーの前では亜梨紗が座ってテレビを見ていた。


「亜梨紗」

つばさがそう呼びかけながら、亜梨紗のすぐ隣…俺の正面に座る。

「あ、つばさおかえりー」


「ただいま」

俺の目の前には、髪の隙間から覗けるつばさの白いうなじ…

お風呂上がりで、髪も濡れていて…


なんだか、すっごいそそる…

無意識に俺は手を伸ばして…


「あ、京平さんテレビ見える?」

いきなりつばさが振りかえった。


「…見てないから平気」


「そっか。…その手は?」

引っ込めなかった俺の手を見て、つばさが不思議に思う。
無理もない。

「……つばさ、背中に糸くずついてる」


そう言って、本当はついてもいない糸くずを、背中から取る動きをした。


「ありがとう」

つばさはそう言って笑みを浮かべ、また前を向き直った。


「………」

俺は体を起して、ソファーから立ちあがり、自分の部屋に向かう。

階段を上がって、部屋に入り、扉をしめ切って…


「何やろうとしてた!?落ちつけよ俺‼」

その場にしゃがみこんだ。