どうかしてる。

つばさの話を聞いてて、なぜだか、聞きたくなくなるなんて。


《…聞いておいた方がいじれて楽しいのにな…》

チラッと横目でつばさを見る。


映画の画面をまっすぐ見ていた。

《へぇ、意外だなぁ…こういうの苦手かと思ったんだけど…》


亜梨紗もまっすぐ見ている。

亜梨紗は、俺がホラー好きな影響を受けたのか、中学にあがる頃にはホラーを見ても叫ばなくなった。


《叫んでるのも可愛かったけどなぁ…》

不意に、亜梨紗と目があった。

亜梨紗は小さく笑ってつばさの前で手を振った。



つばさは何も反応しない。

「つばさ…?」

俺が呼びかけても反応がなかった。

「……これ、どうしたんだ?」


「つばさはね、ホラー映画見てると、恐怖のあまり放心状態になるんだよ」

亜梨紗が楽しそうに笑った。