仁美さんが、帰って行った。


「…お兄ちゃん、仁美さんに何かしたの?」

亜梨紗がじと目で聞く。


「いいや?してないけど?

このあと家族で食事なんだと」


「そっか…それなら仕方ないね…」

亜梨紗はシュン…としながら、リビングに戻り、ソファーの前に座った。


京平さんは伸びをしてから自室に戻って行った。


私もリビングに戻り、亜梨紗の隣に腰掛ける。


「……仁美さんって、キレイな人だったね」


「つばさもそう思う!?お兄ちゃんにはもったいないよね」


「いや、お似合いだったよ?」


「嘘だぁ」

亜梨紗は声をあげて笑う。


私は仁美さんの背中に伸びていた、キレイな髪を思い出した。


そして、自分の髪をひと束握る。


「………髪、伸ばそうかなぁ…」


気づいたら、そんな言葉を口にしていた。