残された私と翔太。




『………なんだったんだ。あいつ……』




ぼそっと呟いた翔太。





確かにね。



今回ばっかりは翔太に賛成だわ。



「いいわよ。早く帰りましょう。」



スタスタと歩き始めると、翔太もついてきた。



『なぁ、姉貴?』




「何よ」



『あいつ……、陽のことだけど。
金髪がさ、“俺らのトップが呼んでる”って言ってたじゃん?』



うん、言ってたね。



「……で?」




『トップに直接呼ばれたってことは……
 結構、上の立場ってことか?』




幹部って言いたいの?



『そうそう!!幹部。
陽、あんなひょろくてケンカできんのかよ?』



確かに。


「……でも、自分で“今は高橋より強い”って言ってたよ。
あの高橋より強いってすごくない?」



『すごくねぇよ。
俺だって強かったし。』



…………へぇ?




「ま、いいわよ。こういう話は。」




スタスタと歩く私達はあっという間に家に着いた。




『ただいま〜』


誰もいないのに翔太はいつも言う。


「だから、誰もいないっつ〜の」



『あのなぁ…。
こういうのは言ったほうがいいんだよ。
いいか、姉貴。
挨拶は大事だぞ、挨拶。』


……何こいつ。



違う。わかってる。
あんたが絶対“ただいま”って言う理由。


アイツが帰ってるかもしれないからでしょ?
アイツがまた前みたいに私達のところに帰ってくるって信じてるからでしょ?


……でもそれは……。


意味がない。

だってアイツは帰ってこない。

一生。 永遠に。