「で、でも……、わたしの呉服問屋は……」 「まぁ、そこが今の俺の目下の悩みどころなんだけどね。 呉服の知識の無い俺が、どう販売に関われるかってとこがさ」 「ゆ、ゆういち……」 揺らぎ無い決意のもと、雄一の口から繰り出される二人の結婚へ向けての布石に、わたしは胸を詰まらせていた。 だって、雄一はそんな真剣な素振りも言葉も、わたしには一切見せたことがなかったから。