大学三回生の秋、わたしはリクルートスーツに身を包み会社訪問を繰り返していた。



確かに、わたしは呉服問屋の跡取り娘ではあるけれど。

実際のところ、店の切り盛りは父と番頭の坂本で事足りていた。

わたしの母も店に出ている訳ではないし。

だから、わたしは自分の為に卒業後の進路を決めなくてはならなかった。


たとえ将来、この店を継ぐことになるにしても、それはまだずっと先のことだと思っていた。