峠が下りに変わる頃、車の列は少しずつスピードを上げて動き出した。 「ここを抜ければ、すぐ大曲だ」 うるうると萌える緑の山をぬって、車は進んでいった。 山肌に夕日が差し込み、辺りは、徐々に輝きを失っていく。 夕暮れは近い。 ――なんだか物悲しい気持ちになってくるのは、そのせいかな。 雄一の本当の気持ちを知って、迷いは拭えた筈なのに。 迫りくる夕闇が、わたしの心を小さく揺さぶっていた。