お袋の兄、健一さんと華の母操さんは幼馴染だった。

お袋を含めた三人は、小さい時から仲が良く、いつも一緒に遊んでいたという。

年頃になり、美しく成長した操さんと健一さんは、ごく自然に恋に落ちた。


だが、お互いを知り尽くした二人は、同時にお互いを思いやる余り、大きな間違いを犯す。


そろそろ結婚を、と二人が考え始めた頃、それは丁度、操さんが短大を卒業した春のことだったそうだ。

お袋の父、東山寒山が多額の借金を抱えて自殺した。

彼は元々、腕の良い京染めの絵師だったのだが、独り身の寂しさからギャンブルにのめりこんでしまったのだ。

知り合いやら、親戚からの借金に加え、闇金融からの多額の借金もあり、東山家は窮地に追い込まれた。

今なら、自己破産、なんて選択もあったかもしれない。

相続放棄するとかな。

だが、当時、多重債務者の立場は弱かった。

それに加え、健一さんは父親の残した借金は自分が返すのだという、世間に対する義務感のようなものを強く持っていたのだろう。

お袋と健一さんには、自宅と他売れるもの全てを売り払って、なお数千万の借金が残った。

健一さんは給料の半分以上を返済に充て、生活費にも事欠く毎日が始まったのだ。