だけど……


「名前は二階堂華、同じ歴史研究会の同級生。

会って驚くなよ、深雪にそっくりなんだ」


そう告げた時のお袋の驚きようといったら……


いつもは冷静沈着で、何事にも動じないお袋がうろたえた。


「もしかして、二階堂呉服店の?」


何処でどうやったら、華の実家の家業をお袋が知りえるのか。

俺がたどり着いた答えは、単純明快。


「もしかして、知り合い?」


お袋は唇を震わせて、涙を堪えていた。

悔しさと驚きと哀しみを耐えるような、それは尋常じゃない反応だったのだ。


お袋から、昔の話を聞きだすのに、随分と時間が掛かった。


何故ってそれは、俺が生まれるずっと前の、なんと、お袋の兄さんと華のお母さんの恋物語にまで話は遡っていったのだから。