わたしの心は揺れていた。
「華が不安に思っているって、わかっていた。
不安な思いで俺に抱かれて、時々泣いていたのも知っていた。
やっぱ、俺って酷い奴だな。
でも、東京ではどうしても言えなかった。
この深雪の墓前で、深雪の前で、きっぱりと深雪への思いに決別した後でなけりゃ、言えなかったんだ」
「雄一?」
雄一はわたしの両手を優しく握るとこう言った。
「俺は華が好きです、大好きです」
そして、墓前に向かい
「美雪、これが僕の大好きな華です」と言った。
わたしの頬を温かいものが流れた。
それは、一番聞きたかった言葉である筈だった。
絶対に聞けないと思っていた言葉でもあった。
雄一の好き、の言葉を全身に浴びて、わたしは雄一の妹、深雪さんの墓前に手を合わせた。
――ごめんなさい、みゆきさん。
雄一を好きでいて、いいですか?



