「俺はお前を手放すつもりはないよ」



わたしの返事を待たずして、雄一が言葉を放つ。


「それって、わたしの気持ちは無視ってこと?」


「華の気持ちはわかってる」


「わかってるって……」


「華が俺を好きなことくらいわかってるって」


「好きなことくらいって……」


好きじゃなくて大好きだよ、って言おうとしたら雄一に抱きしめられていた。


「華なしじゃいられない。

華なしじゃ生きて行けない。


華の全てが欲しい……」


その言葉はそのまま、父が母に心の中でずっと唱えていた言葉で。

それが痛いほど伝わって、胸が熱くなった。



「華、愛してる」



恥ずかしげも無く愛を囁く雄一には、周りの状況はきっと見えない。


――ここは病院のロビーだよ。


優子お母さんだって、そこに居るんだよ。



「華と……」


「雄一?」


「いつまでも一緒にいたい」




どうやら雨はあがったようだ……