母の病室には、血圧と心拍モニターの微かな電子音だけが響いていた。




父の座っていた丸椅子に腰を下ろし、布団に隠れた母の手をまさぐった。


「お母様……」


消え入るような小さな声で問いかけたわたしの言葉に、

「華?」

母のしっかりとした声が返ってきたのだ。


もしかして、もう当の昔に目覚めていた?

父ではなく、わたしが来るのを待っていた?


その心の問いに、自分で答えを見つけるのが怖くて……


「お父様を呼んで……」


と、わたしが母の手を離そうと力を緩めた時だった。


母の手がわたしの手をしっかりと掴んで、「華に話があるの」と気丈な声がはっきりと聞こえたのだ。



雄一の言葉に感じた違和感が現実のものとなる。

その向こうにある真実を、わたしは確かめなくてはならない。