<ガラガラガラ……、ガシャン、ガタン>




一階の台所から、何かが崩れ落ちるような大きな音がして、わたしはベッドから飛び起きた。


それは、雨の気配でまどろんでいた六月の早朝。

ヒタヒタと窓を濡らす雨の雫が、わたしの視界を歪めていた。


慌てて階段を駆け下りたわたしの目の前には、台所の床の上、壊れた食器に重なるように倒れた母の姿があった。


「お母様!」


わたしの声に続いて、父も慌ててやってきた。


「操っ!」


父は、母の周りに散らばった壊れた食器を無造作に手で払いのけると、母の身体をその中から抱き上げた。

美しい母の顔は、ところどころ、壊れた食器で傷ついて血が滲んでいた。



だが、何より驚いたのは、母の顔色が土色で、血の気が全く無かったことだった。