わたしは坂本に、こんな辛い苦労話をさせてどうしようというのだろう? わたしの境遇と彼女のそれは、似ても似つかないほどにかけ離れていて。 聞けば聞くほど、わたしは自分の幼さや身勝手さを思い知ることになるだろう。 でも、聞かなければ前に進めない。 何故かそう思ったのだ。 「お願いします。どうか続けてください」 わたしは、心を無にして彼の話に耳を傾けようと集中した。 これは、欲や興味ではなく、わたしの為に話される物語なのだと。