………でも、泣きたくないの。
隼人がちゃんと生きて、息をしているって知ってるから、
血まみれになった隼人の姿も、あの雨の冷たさも、全部思い出せるけど、泣きたくない。
私は、懸命に生きようとする隼人をずっと見てきた。
隼人はあんなにぶっきらぼうなくせに人気者で、お見舞いに来た人はみんな悲しんで。
涙を流す人だって、少なくなかった。
私はそんな人たちを見ていただけで泣かなかった。
人前で泣くのは苦手。恥ずかしいって思ってしまうから。
だけど今は、泣いてもいい?
問いかけるより先に、眠ってる隼人の顔が、景色が、歪んでいく。
ぽつ、と水滴が手の上で跳ねたのを見て、私はベッドの端を握り、隼人の腰に顔を埋めた。

