「父さん、そろそろ時間みたいだ……。もう残留エネルギーが切れそうだ……」


「エイジ、待ってくれ!」


「父さん……、ありがとう……」


「エイジ!!」


エイジの思念はそこで途切れてしまった。



───ケンイチの脳、たんぱく質のレベル操作による特定の記憶の消去。
しかしこれだけ強烈にDNAレベルで書き込まれた記憶を完全に消し去る事は不可能だ……。


人工海馬によるトラウマのブロック機能と合わせればなんとか忌まわしい記憶を封印できるだろう。


ケンイチは生まれ変わった、ハルトとして。全ての作業を終えると男は倒れこむように深い眠りについた。


しかしケンイチの黒い記憶はこの時、男の精神に深いダメージを与えていたのだった……。



Chapter 05 END