いつまでもこの幸福感を感じ続けていたかった。


だが急に男は地表に押し付けられた。


音が途切れ重力が戻った感じがして次の瞬間どうしようもない不安感が男に忍び寄る。


なんだか判らない押しつぶされそうな圧力と息苦しい程の閉塞感が襲ってくる。寂しさ、孤独、疎外感。寂寥感。


助けを呼んでいた、泣き叫んだ。しかし誰も手を差し伸べてはくれなかった。痛み、激しい痛みが襲ってきた。手や足や頭、顔、腹部……。


体中で痛みを感じた。暴力の記憶だった。その悲痛な記憶は徐々にエスカレートしていき男の五感を揺さぶり続けた。


母親から受けた仕打ち、その情夫達から受けた暴力、せっかん、怒号。叩かれ、殴られ、蹴り上げられ、叩きつけられる。