ケンイチの脳に移植されたマイクロチップが発する脳波を手術台の横に配置された大型のバイオフィードバック受信機が受信している。


手術台に固定された脳波モニターがケンイチの脳波をリアルタイムにサンプリングしている。


男は受信機から出ている六十箇所に及ぶ電極が繋がっている特殊なヘルメットを被り電極パッドを自分の頭皮にセットした。


そしてアームレストの付いたゆったりとした革張りの椅子に腰を深くおろすと静かに眼を閉じた。


瞑想。男は精神を集中させた。ケンイチの過去の記憶をマイクロチップで吸出し自分の脳にイメージとして直接呼び出そうというのだ。


数十分が経過した。ケンイチの記憶の扉、それはガードが固くなかなか男の呼び出しに答えようとしないようだ。


───封印を解くパスワードが必要なようだな……。


男はヘルメットを外し椅子から立ち上がった。