ケンイチは雪の上に点々と落ちた自分の血を見た。


血の色が金魚になった。


ケンイチが握りつぶして殺した、母親が大事にしていたあの赤い金魚だ。


金魚は雪の上から抜け出すとケンイチを馬鹿にするようにひらりと舞い、


ぱちんとはじけて空中に消えた。


その瞬間今までに感じたことのない激しい怒りがケンイチを支配した。


ケンイチは雪玉を投げつけた少年を睨みつけた。


その視線は強い憎悪に満ちていた。


少年が叫びながら走ってきてケンイチにつかみかかった。