その日の朝、父親は、いつもどおりに始業前の


アルコールチェックを受け、車両点検を終えると営業所を出た。


始発停留所までバスを回送すると、


朝の通勤通学客を乗せて出発した。


ネオシティは復興期のピークを迎えつつあり、


一部の恵まれた人々に限定されてはいたが、


やっと希望の光が見えてくる時代になろうとしていた。


賑やかな学生達の会話、朝だというのに座席に座ると


すぐに眠ってしまうスーツ姿の公務員達。


何も変わらない穏やかな一日の始まりだった。


父親の運転するバスは幹線道路にさしかかる交差点で信号待ちをしていた。