私が笑えば、律も笑う。

辛いこともあるけど、律がいるから大丈夫なんだ。

「忘れ物ない?」

「うん、たぶん」

「ハンカチ持った?」

「持たなくてもいいし」

「わかんないよー?急に鼻血でたらどうすんの?」

「その場合はハンカチじゃなくてティッシュじゃね?」

「まぁそうだけどー」

くだらない話をしながら、律は玄関で振り返った。

私は目を閉じる。

額に触れる、律の柔らかな唇。

「行ってきます」

「行ってらっしゃーい」