「吉岡先生、すみません…」


律が口を開いた。

消え入るような声で。


「これは夫婦の問題でもあるから、オレの責任でもあるんです…。柚希だけが悪いんじゃないから…」


昨日は怒っていたのに、今は私のことをかばってくれてる。

それが余計に涙を誘った。

診察室を出たあと、律が言った。


「もし、柚希が産みたいなら、オレは産んでもいいと思う」

「だって……」

「大事な命だから」


本当は迷ってる。

どうしたらいいのか。

でも、私が決めた答えがどうであろうと、律はきっとOKを出すつもりなんだ。


「柚希の味方だから」


そう言って、仕事に戻るため、足早に病院の廊下を歩いて行った。