ひさしぶりの外の空気。

まだ本調子じゃないから、思い切り深呼吸はできないけど、気持ちいい。


「休憩しようか」


促されてベンチに座る。

目の前には大きな木。

青空に向かって枝を広げている、その木を見上げる。


「伊崎くん、知ってる?この木、私が物心ついたころからあるんだよ」

「立派だもんなー」

「私ね、小さい頃からずっと、10階の窓からこの木を見てたの」

「10階…って、小児病棟か」


生まれてすぐ医大病院に運ばれて、人生の半分くらいを病院で過ごした。

同じ窓から、同じ風景を見ていた。


「…いつかは、この木で木登りするのが夢だったんだ」


そう言ったら、伊崎くんが慌てて言う。


「えっ!?ダメだよ!?いくらなんでもそれはっ…!」

「やだ、わかってるって」