再び意識がはっきりしたのは、ぽかぽかした日差しの当たる昼下がり。

私のママと律ママがおしゃべりをしているらしい。


「あら、起こしちゃった?」


起こしちゃった?じゃないでしょ。

それだけペチャクチャしゃべってたら誰でも気づくって…。

そういえば…

お腹がへこんでる。


「りつは…?」

「仕事。手術が終わったら、また来るって言ってたわよ」

「…ふーん、…赤ちゃんは?」

「今はNICUで保育器に入ってたけど、元気に動いてた。目元が柚季、口元が律くんって感じでかわいかったわ~!ねぇ!?」


律ママと盛り上がってるし。

初孫だもんね。

もう“おばあちゃん”なんだ。


「抱っこした…?」

「ううん、窓の外から見ただけ」

「会いたいなぁ…」


ベッドの周りを見ると、何本も点滴がぶらさがっていた。

輸血のパックもあるし。

私のほうがヤバイって感じか…。


「柚希、起きた?」


車いすを押して登場したのは律。


「行くか?」

「行く!行きます!」


って元気よく返事したけど、お腹の傷が痛んだ。

ヘロヘロになりながらようやく車いすに乗って、律に押してもらってNICUへ。

“道重 柚希ベビー”と書かれたネームプレート。

そっと覗き込む。

透明の箱みたいな保育器のなかで、ちいさな手足をぴょんぴょんさせている。


「か…かわいいけど、大丈夫?」

「は?なにが?」

「元気すぎない…!?」


律が爆笑したのは言うまでもない。