予想していた通り、けっこうな出血量で私のほうが危ない。

緑のシーツの下で意識が飛びそうになりながら、赤ちゃんの無事を祈る。

それでも、聞こえた。

必死で生きようとしてる、元気な産声。

夢なのか、現実なのか。


「元気な男の子ですよー!」


想像してた“赤ちゃん”よりも小さくてやせっぽっちのくせに、泣き声は大きい。

白いタオルにくるまれて必死で泣いてる。

頭がボーっとしてて、半分落ちかけてる意識のなかで声をかけた。

“ありがとう”って。

それしか言葉が出てこなかった。

私と律の間に生まれてきてくれてアリガトウって。

普通の健康なママのもとに生まれてきたら、もう少しお腹のなかにいられたのにね。

それでも…この子は私を選んでくれた。

こみ上げるものがあって涙がこぼれた。

その涙を指で拭ってくれたのは、最愛の旦那さまだった。

律ってば目、ウルウルしてる。

私がもう少し元気ならからかってやろうと思ったけど、今は見逃してあげる。


「柚季、ありがとう」


“こちらこそ”って言おうと思ったけど、その途中で意識を失ってしまった。