俺の腰を強く抱き締める樹里は泣きじゃくっていた。
「あんな女になんか絶対渡さない!!
もしあの女を選ぶなら、パパに頼んで真白をクビにしてもらうから!!」
「―――いいよ」
「…え?」
俺の言葉が理解出来なかったのか、聞き直した彼女の手は力が弱まり、腕から解放されて彼女と向き合うと、彼女は目を丸くしていた。
「それでお前の気が済むなら、クビにしても構わねぇよ」
俺は微笑みながら、冷静な口調で彼女にそう言い終えると、店の中に戻った。
「……何でよ…?真白…」
樹里は路上にへたり込んで涙をボロボロと地面に零した。