「そこの君、黄色がかった君だよ。君は修業の数が少ないみたいだけど、現世では、どんな暮らしをしていたんだい?」

「はあ、前回の暮らしは毎日が退屈なほどに何もなかった気がします。結婚もなく、子供が生まれることもなく。」

「しかし、人を好きになったりはしたんだろう?仕事もすれば、いろいろと苦しいこともあっただろうし」

「そうですね、好きになった女性は居たのですが、話をすることも無かったなあ。もっとも、好きになったのは全部アイドルでしたから。仕事は、アルバイトをいくつかしてたけど、長続きしなかった気がします」

「ふ~ん、最期は、どうやって天国に来たの?」

「レコード屋のバイトの帰りに自転車で道を横切ろうとしたら、無免許運転の中学生が運転するバイクと接触して、電柱にぶつかったみたいですね。良くは分からないけど、肉体から魂が抜けた後に見回した感じから、たぶんそうだと思います」

「なるほど、君の前回の生涯に何の意味があったのかは私には分からないけど、意味のない生涯はないから、なんかあったんだろうね」