〇●ポーカーフェイス●〇

俺は走って東城の歩いて行った方へ向かった





しばらく走るとベンチに横たわる東城の姿




俺は東城の前まで走り、近くで立ち止まった





はあはあ、と息がきれていてなかなか声が出せない




先に口を開いたのは東城だった





「来ると思った」





そうベンチで仰向けに寝転がり、空を見上げている





「待ってたの?」




そう聞くとふっと鼻で笑う




「まさか。」





「つーか、お前はどこでもそうやって寝転がるのやめろよな。まだ屋上なら俺しかほとんどこないからいいけど、ここはいろんな人とおるんだし。無防備すぎ」




そう東城を真上から見下ろした





東城は俺を真っ直ぐみつめ、俺の瞳を覗き込む





「なんであんたはいいわけ?」




そんな言葉に少しドキッとする




「別にそういう意味じゃなくて」





「そういう意味?ってどういう意味?」





「うるせーな。だまれ」





そう目を逸らし、鼓動を整える






「で、何で来たわけ?何か聞きたいことでも?前の学校の話し?あの子との関係?」




そう呆れたようにはなす東城




俺は東城のことをもう一度真上から見下ろし、そっと笑った




「別に。ただ一緒にいたいだけ。」




そう言うと東城はキョロッと目線を横にずらした





「何それ。何で学校以外であんたと一緒にいないといけないのよ」





「別にいいじゃん?たまには。まあ、何か話したいことがあるなら聞くけど?別に俺がいないと思って独り言いってもいいし」





東城はぼーっと何処かを眺めながら口を開いた




「さっきのは中学のときのクラスメイト。裏切り者。自分を犠牲にしてまで私を守るほどあの子にとって私は価値がなかった。みんな同じ。みんなそうやって離れていった。それだけ。これ以上は話したくない。




ていうか、今の独り言」





東城はベンチの背もたれの方に顔を向け、俺から隠れた






そんな東城を見てぎゅっと苦しくなる





俺は東城の頭にそっとふれ
「独り言。ありがとう」





と呟いた


「でも、俺らは、離れない。お前は死んでなんかいない。だから、また笑える。



今の俺の独り言。
じゃあな!」




そう言って俺はバイトへむかった