【短編】裏山の大木



…その傷さえ無ければ。


女の体には、まるで、キリで開けられたような、穴とも呼べる傷があった。それも、2、3個ではなく、体中に…。



弘太郎は思った。


あぁ、きっとこの女は、大木の精霊だ、と。



「おい、弘太郎、どうしたんだ?」



立ち上がって、俊が言う。その女は、俊の背後にいた。だから、俊は気付いていない。