…その傷さえ無ければ。 女の体には、まるで、キリで開けられたような、穴とも呼べる傷があった。それも、2、3個ではなく、体中に…。 弘太郎は思った。 あぁ、きっとこの女は、大木の精霊だ、と。 「おい、弘太郎、どうしたんだ?」 立ち上がって、俊が言う。その女は、俊の背後にいた。だから、俊は気付いていない。