ロランは朱音がつくり出した涙の雫を、瞬き一つすることなくじっと見つめている。
「・・・そうか・・・。このペンダントを見た瞬間、なんとなく嫌な予感がしてたんだ」
 掠れた少年の声は酷く切なげで、朱音はもう少年に掛ける言葉さえ見つからない。
 黙ったまましばらく少年の手を優しく包んでいた。
「アカネ、ルイの最期を訊いてもいいか・・・?」
 涙こそ見せないが、少年の哀しみが言葉では表せない程大きなものだということは、朱音にもよく分かっていた。
 朱音は知り得る全ての事を話した。
 どういう経緯で彼とともに旅に出ることとなり、自分達をどんな出来事が待ち受けていたのかということを。そして、あの日の地下道での恐ろしい悪夢を・・・。
「ルイは、自分の信念を貫き、お前を最期まで守りきったんだな・・・」
 全てを聞き終わると、ロランは呟いた。それは、とても切なく淋しそうな声だったが、双子の兄であるルイに対する誇りを感じさせるものであった。
「もう泣くな。お前は元々顔のつくりが繊細じゃないんだ。泣くと余計見窄らしい」
 唯一の肉親を失くしたロランが一番泣きたいだろうに、そんな皮肉を飛ばしながら、少年は笑った。
「あの気の大人しいルイに、お前を守りたいと本気させたんだ。光栄に思え」
 朱音は再び勢いよく涙が溢れ出した顔でロランにがばりと抱きついた。
「おっ、おい!」
 びっくりはしたものの、少年は朱音のしたいようにさせてやることにした