クロウの言葉に、アザエルは僅かに溜息のようなものを溢した。
「例え魔力がなくとも、奴にはあの凶暴な性格と多少の剣の腕があります」
「その時は、アザエルがこてんぱんにしてくれればいいだけでしょ」
きっぱりと言い切ったクロウに、アザエルは仕方無く頷いた。
あの日、全てを終えた後、クロウはあの小さな町へ引き返し、意識を手放している青年を魔城へと連れ帰った。アザエルとしては、危険分子はあの場で殺しておきたかったのだが、それをクロウは許さなかった。
意識を取り戻したファウストは、以前のような炎を操る力を失い、すっかりただの血気盛んな青年に成り下がっていた。クロウの説明によると、血の契約を結んだ際に朱音が炎の魔力と対称的な水の魔力を彼に与えた為だということである。つまりは、彼の中で炎と水の魔力が互いを打ち消しあい、そして力を失ってしまったということになる。
そんな彼を、クロウは事もあろうか魔城で働かせると言い出したのだ。
アザエルは、いつか隙を見て、ファウストの息の根を止めてやろうと決めていた。
アザエルは不機嫌に中庭の通路をつかつかと歩いていた。
擦れ違う者は、とばっちりを受けるのでは無いかとびくびくとしながら深く頭を下げてそそくさと隣を通り抜けてゆく。明らかにアザエルからは怒りの色が滲み出ていた。
「おい、クズめが。そこにいるのだろう」
「例え魔力がなくとも、奴にはあの凶暴な性格と多少の剣の腕があります」
「その時は、アザエルがこてんぱんにしてくれればいいだけでしょ」
きっぱりと言い切ったクロウに、アザエルは仕方無く頷いた。
あの日、全てを終えた後、クロウはあの小さな町へ引き返し、意識を手放している青年を魔城へと連れ帰った。アザエルとしては、危険分子はあの場で殺しておきたかったのだが、それをクロウは許さなかった。
意識を取り戻したファウストは、以前のような炎を操る力を失い、すっかりただの血気盛んな青年に成り下がっていた。クロウの説明によると、血の契約を結んだ際に朱音が炎の魔力と対称的な水の魔力を彼に与えた為だということである。つまりは、彼の中で炎と水の魔力が互いを打ち消しあい、そして力を失ってしまったということになる。
そんな彼を、クロウは事もあろうか魔城で働かせると言い出したのだ。
アザエルは、いつか隙を見て、ファウストの息の根を止めてやろうと決めていた。
アザエルは不機嫌に中庭の通路をつかつかと歩いていた。
擦れ違う者は、とばっちりを受けるのでは無いかとびくびくとしながら深く頭を下げてそそくさと隣を通り抜けてゆく。明らかにアザエルからは怒りの色が滲み出ていた。
「おい、クズめが。そこにいるのだろう」


