(否、これが正しかったに違いない・・・! 王妃をあのままあの国王の隣に放置することなどできる筈がない・・・!!)
 きっとあのままベリアルをあのままにしておけば、彼女の心が壊れてしまうのは時間の問題だった。
けれど、実際には、ベリアルの心はもう再起不可能に近い程壊れてしまっていた。
「ベリアル王妃、どうかわたしをお恨みください・・・。どれだけわたしを罵ろうと、わたしは構いません。ですが、どうか覚えておいてください。いつでも、わたしは貴女を心から愛し、お慕いしているということを・・・」
 ベッドに伏せったまま、ベリアルは静かにブラントミュラーの発した言葉を聞いていた。
「そして貴女の為ならば、わたしは如何なる困難でさえ乗り越えてみせます。愛しい貴女が望むことならば、何だって叶えましょう・・・」
 じっと動くことのなかったベリアルが、その言葉を聞いた途端、ゆっくりとベッドに起き上がった。以前より痩せてしまった顔。涙はまだ頬を濡らしている。
「どんなことでも・・・?」
 ベリアルの問いに、「ええ」とブラントミュラーは優しく微笑み返した。
「では、わたくしにルシファー陛下を返して頂戴」
 そう言ったとき、ブラントミュラーはじっとベリアルの大きな瞳を見つめて頷いた。
「ええ、分かりました。貴女がそれを望むなら・・・」
 予想外の返答に、ベリアルは驚きもう一度聞き返す。