とさりという音とともに、クロードの身体が地面に倒れたのだ。
 じわりと砂の上に広がってゆく血だまりを見たとき、自分達の指揮者がこのサンタシの王の剣の前に敗れたことを悟り、ザルティスの神兵達は確かに怯んだ。
 しかし、指揮者を失っても尚、前進することを教えられてきたのか、すぐに神兵達が剣を抜きフェルデンに襲い掛かる。
「くそっ!!」
 フェルデンの前に、すっと現れた黒い美しい飛竜は、彼を背に乗せ空へ舞い上がった。
『グルルルルル』
 スキュラは、フェルデンを後押しするように、喉を鳴らした。
 町の方では、いつの間にか火の手が上がっている。あの下ではファウストと少年王が凄まじい闘いを繰り広げているに違いない。
 フェルデンは、この軍をこれ以上あの街へと近付けることはなんとしても阻止しなければならなかった。そして、少しでも早く、少年王の援護に駆けつける必要があった。それには、この人数を一人ひとり相手にしている時間と余裕などどこにも無い。
 そんな時、ふとあの碧髪碧眼の魔王の側近の言葉が脳裏に蘇った。

“この国を救いたければ、石を使え。所詮つまらぬ意地だけで国を守ることなどできはしない。貴様の剣技に魔力が加われば、少しは使い物になるかもしれんがな。フェルデン王”

 今まで、魔族の血から作り上げられた石の力を使うなど、考えるだけでも気分が悪くなったが、今こそそれを破る時だと、フェルデンは心を決めた。