雨が上がり、立ち込めていた黒い靄は晴れてゆく。
もとの温かく優しい太陽の光が、朱音を労わるように差し込んでいる。
「アカネ・・・」
何もない真っ白な世界に、朱音は膝を抱えてふわふわと漂っていた。
心地いいその空間で、朱音は最後に声を聞いた。
「・・・誰・・・? すごく疲れたの・・・、お願いだから少し眠らせてくれない・・・」
うわ言のように返事した後、音も無く静かに現れたのは、もう一人の朱音、クロウだった。
「アカネ、君はよくやったよ。後は安心して僕に任せて・・・。もう眠っていいんだよ」
美しく優しい少年の声は、朱音の耳にひどく心地よく響いてきた。
「クロ・・・ウ・・・。長い間、身体を貸してくれて・・・、どうもありがとう・・・」
既に目を閉じている朱音は気付いてはいなかった。クロウは傍らで、静かに涙を流していた。
「礼を言うのは僕の方なんだよ、アカネ。君は僕・・・僕は君だったんだ・・・」
“おやすみ、アカネ”
クロードの剣とフェルデンの剣が激しくぶつかり合う。
両手剣を相手に闘ったことの無いフェルデンであったが、師であるディートハルトに鍛えられた剣筋は確かなものだった。


