ヘロルドの苦しむ姿に気にした様子もなく、空いた手でヘロルドの服の腹部を弄り始めた。
「や・・・めろ・・・!」
 懸命にその手を払おうとするが、水剣をまた深く差し込まれ、痛みにその手を離してしまう。
「やはりな・・・。魔光石か。そんなことだろうと思っていた」
 見つけ出した赤黒い石の塊を手にすると、アザエルは口元に冷ややかな笑みを浮かべた。
「は、早く・・・殺せ・・・!」
「苦しいか? 生憎だが、貴様を楽に殺す気は無い。我主を陥れた罪、そう簡単に許されると思うな」
 アザエルは突き刺していた剣を一気にヘロルドから抜き去った。
「ぐああああああ!!!」
 あまりの痛みに白眼を剥き、痙攣するヘロルドをアザエルは靴の踵でぐいと転がした。
「貴様に聞きたいことがある。この石をいつどこで手に入れた」
 ヘロルドは口の端から血を垂れ流し、虚ろな眼でアザエルを見上げた。
 しかし、その口からは何も発せられない。
「そうか」
 水剣が再び落とされ。今度はヘロルドの左腿に深く突き刺さる。
「ぎあああああああああ!!!」
 悲鳴を上げるヘロルドに、アザエルは感情の篭らない声でもう一度問い掛ける。
「この石の出所はどこだ?」
 呻き続けるヘロルドを甚振るように、アザエルは突き刺さった剣先をゆっくりと抜いてゆく。
 この男を敵に回してしまった自らに深く後悔しながら、ヘロルドは痛みに声が嗄れる程叫んでいた。