「なに、わたしゃ誰にも話しゃしないよ」
今から約一千年前、この世界にはまだ、“サンタシ”や“ゴーディア”が栄えていなかった時代。即ち、“魔力”というものがものレイシアにはこのときにはまだ存在しなかった。
しかしながら、いずれサンタシの基盤となる“エアリエラ王国”が現在サンタシが存在する大陸に存在し、文明を築いていた。
そしてもう一方の大陸では、広大な大地に原住民の村が点在し、自然と調和しつつ暮らしていた。
“ぼく”は、その原住民の小さな村の一つで生まれた。村長の家の末息子だった“ぼく”だったが、気丈な兄達に比べ気が弱く、ひどく臆病者だった。
そんな“ぼく”は親兄弟からも蔑まれ、村の中でも除け者にされてばかりだった。
父が亡くなり、長男がその後を継いだ後、何をやらせても足を引っ張ってばかりの“ぼく”に、兄達の苛立ちは最高潮に達し、とうとう陰湿な虐めが始まった。この頃の“ぼく”は三十歳を過ぎ、とうに婚姻を結んで子を持ち一家を背負う一人前の男になっていてもおかしくない歳合だった。なのに“ぼく”は、こうして兄達の目から逃げては村の外れの林で時間を潰していた。こんな“ぼく”に家庭など持てる筈もなかったのだ。
「お前さんも、もういい歳だ。わたしゃお前さんは村を出て、もっと広い世界を見にいくべきだと思うがなぁ・・・」
ぽそりと彼が溢した言葉は、“ぼく”の心になぜか響いてきた。
「・・・でも・・・、村を出るなんて・・・、兄さん達にどう説明をしたらいいんでしょう・・・。きっとひどく叱られるに決まっています・・・」
“ぼく”の存在を疎ましく思っているだろう兄達だったが、この頃、村を出ることは村の教えに反することとして、強く罰せられることになっていた。村を出たいと言ったところで、村の面汚しめと罵られるにすぎないだろう。
今から約一千年前、この世界にはまだ、“サンタシ”や“ゴーディア”が栄えていなかった時代。即ち、“魔力”というものがものレイシアにはこのときにはまだ存在しなかった。
しかしながら、いずれサンタシの基盤となる“エアリエラ王国”が現在サンタシが存在する大陸に存在し、文明を築いていた。
そしてもう一方の大陸では、広大な大地に原住民の村が点在し、自然と調和しつつ暮らしていた。
“ぼく”は、その原住民の小さな村の一つで生まれた。村長の家の末息子だった“ぼく”だったが、気丈な兄達に比べ気が弱く、ひどく臆病者だった。
そんな“ぼく”は親兄弟からも蔑まれ、村の中でも除け者にされてばかりだった。
父が亡くなり、長男がその後を継いだ後、何をやらせても足を引っ張ってばかりの“ぼく”に、兄達の苛立ちは最高潮に達し、とうとう陰湿な虐めが始まった。この頃の“ぼく”は三十歳を過ぎ、とうに婚姻を結んで子を持ち一家を背負う一人前の男になっていてもおかしくない歳合だった。なのに“ぼく”は、こうして兄達の目から逃げては村の外れの林で時間を潰していた。こんな“ぼく”に家庭など持てる筈もなかったのだ。
「お前さんも、もういい歳だ。わたしゃお前さんは村を出て、もっと広い世界を見にいくべきだと思うがなぁ・・・」
ぽそりと彼が溢した言葉は、“ぼく”の心になぜか響いてきた。
「・・・でも・・・、村を出るなんて・・・、兄さん達にどう説明をしたらいいんでしょう・・・。きっとひどく叱られるに決まっています・・・」
“ぼく”の存在を疎ましく思っているだろう兄達だったが、この頃、村を出ることは村の教えに反することとして、強く罰せられることになっていた。村を出たいと言ったところで、村の面汚しめと罵られるにすぎないだろう。


