だからこそ、クリストフは急がねばならなかった。どうしてもサンタシに先回りしておく必要が出てきたのだ。
「ひでえな、旦那、忘れたのか? ほら、魔光石を譲り受けた相手を教えると言ったろ?」
クリストフはがぴくりと顔を上げた。
「ヘロルド・ケルフェンシュタイナー閣下だ」
ボリスの口から信じられない名前が飛び出し、はっとクリストフはボリスを見つめた。
「ボリス・・・、あなたは・・・」
ボリスは可笑しそうに痩せた背を揺らしながら声を出して笑った。
「あっしはヘロルド閣下の忠臣なのさ。ヘロルド閣下の仰る通り、クロウ陛下は魔力をこれっぽっちもお持ちでないらしい。思ったより事が簡単に済んだもんだから拍子抜けだぜ」
トカゲそっくりの吊り上った細い目で、ボリスは愉快そうに話した。
「アカネさんを陥れたんですね・・・」
ボリスはあの夜、奴隷売りの男達に朱音を売り渡したのだ。
軽蔑したような目でクリストフは見返す。
「ああ。あの夜、こうなることを予想して奴隷売りに情報を売りつけたのはあっしさ」
ボリスは吐き捨てるように言った。
「どう思われようが、構わねぇ。あの王がいなくなれば、ヘロルド閣下は晴れてゴーディアの新国王となり、あっしはその側近になれるって訳だ」
ボリスには初めから怪しげな点はいくつもあった。しかし、クリストフはそれを見落としていた。
「宿でアザエルの死体を見た時にはぎょっとしたが、邪魔がいなくて助かったぜ。このところ、どうもあっしはついてるらしい!」
今のクリストフにはもうその場から風を起こして逃げる程の体力も、ボリスに対抗する程の魔力も残っていなかった。そして、朱音を空から探し出す力さえも。
「ここであんたに邪魔をさせる訳にはいかねぇ。あんたを魔城へ連れて行く。無断で魔城に忍び込み、国王を攫った罪は重いぞ。きっとその命をもって償わざるを得ないだろう」
ボリスは手の平をクリストフに向けた。
(まずい・・・!)
「ひでえな、旦那、忘れたのか? ほら、魔光石を譲り受けた相手を教えると言ったろ?」
クリストフはがぴくりと顔を上げた。
「ヘロルド・ケルフェンシュタイナー閣下だ」
ボリスの口から信じられない名前が飛び出し、はっとクリストフはボリスを見つめた。
「ボリス・・・、あなたは・・・」
ボリスは可笑しそうに痩せた背を揺らしながら声を出して笑った。
「あっしはヘロルド閣下の忠臣なのさ。ヘロルド閣下の仰る通り、クロウ陛下は魔力をこれっぽっちもお持ちでないらしい。思ったより事が簡単に済んだもんだから拍子抜けだぜ」
トカゲそっくりの吊り上った細い目で、ボリスは愉快そうに話した。
「アカネさんを陥れたんですね・・・」
ボリスはあの夜、奴隷売りの男達に朱音を売り渡したのだ。
軽蔑したような目でクリストフは見返す。
「ああ。あの夜、こうなることを予想して奴隷売りに情報を売りつけたのはあっしさ」
ボリスは吐き捨てるように言った。
「どう思われようが、構わねぇ。あの王がいなくなれば、ヘロルド閣下は晴れてゴーディアの新国王となり、あっしはその側近になれるって訳だ」
ボリスには初めから怪しげな点はいくつもあった。しかし、クリストフはそれを見落としていた。
「宿でアザエルの死体を見た時にはぎょっとしたが、邪魔がいなくて助かったぜ。このところ、どうもあっしはついてるらしい!」
今のクリストフにはもうその場から風を起こして逃げる程の体力も、ボリスに対抗する程の魔力も残っていなかった。そして、朱音を空から探し出す力さえも。
「ここであんたに邪魔をさせる訳にはいかねぇ。あんたを魔城へ連れて行く。無断で魔城に忍び込み、国王を攫った罪は重いぞ。きっとその命をもって償わざるを得ないだろう」
ボリスは手の平をクリストフに向けた。
(まずい・・・!)


