ただでさえ余計なことに関わらせ、これまでにも多大な迷惑を掛けまくっているクリストフに、これ以上の迷惑は掛けられない。
そう思う反面、目の前の哀れな男が朱音自身に重なって見えた。
朱音が元の世界に戻りたいと思うように、リストアーニャでずっと捕らえられてきたこの男にもきっとどこか別の故郷があって、帰りたいと思い続けてきたに違いない。
そう思うと、朱音にはそう簡単に男を切り捨てることはできなかった。
「それはよく分かってます・・・、クリストフさんにもこれ以上迷惑を掛けられないことも・・・。でも、無理矢理この国に連れて来られ、閉じ込められてきたことを思うと、なんとかできないかなって・・・」
朱音の悲しげな目を見て、クリストフは呆れたように肩を落とした。
「貴女がそこまで言うのなら、仕方無いですね・・・」
「ほ、本当かい!? 有難う! 旦那! お嬢さん!」
目に涙を浮かべて呼び跳ねる男に、クリストフは釘を刺した。
「いいですか、検問所を出るまでですよ? それに、わたし達も危なくなったらそのときはあなたとは他人の振りをします。それでもかまいませんか?」
男は何度も大きく頷いた。
「おお! 構わねえさ! 有難う! 本当に有難う!」
思わぬところで旅の共が増えることとなり、クリストフは困り顔で笑いながら朱音の美しく整った横顔をちらりと見やった。クリストフはどうも朱音にはついつい甘くなってしまう自分に苦笑を漏らした。
「あっしはボリスってんだ。この恩は必ず返すからよ、そうだ! もし無事に検問所を通り抜けられたら、魔光石を譲り受けた相手の名前を教えてやる! 約束だ!」
痩せ身の男、ボリスは軽快に二人の後をついて行く。
クリストフは咳払いを一つすると、もう一度ハットを深く被り直した。
そう思う反面、目の前の哀れな男が朱音自身に重なって見えた。
朱音が元の世界に戻りたいと思うように、リストアーニャでずっと捕らえられてきたこの男にもきっとどこか別の故郷があって、帰りたいと思い続けてきたに違いない。
そう思うと、朱音にはそう簡単に男を切り捨てることはできなかった。
「それはよく分かってます・・・、クリストフさんにもこれ以上迷惑を掛けられないことも・・・。でも、無理矢理この国に連れて来られ、閉じ込められてきたことを思うと、なんとかできないかなって・・・」
朱音の悲しげな目を見て、クリストフは呆れたように肩を落とした。
「貴女がそこまで言うのなら、仕方無いですね・・・」
「ほ、本当かい!? 有難う! 旦那! お嬢さん!」
目に涙を浮かべて呼び跳ねる男に、クリストフは釘を刺した。
「いいですか、検問所を出るまでですよ? それに、わたし達も危なくなったらそのときはあなたとは他人の振りをします。それでもかまいませんか?」
男は何度も大きく頷いた。
「おお! 構わねえさ! 有難う! 本当に有難う!」
思わぬところで旅の共が増えることとなり、クリストフは困り顔で笑いながら朱音の美しく整った横顔をちらりと見やった。クリストフはどうも朱音にはついつい甘くなってしまう自分に苦笑を漏らした。
「あっしはボリスってんだ。この恩は必ず返すからよ、そうだ! もし無事に検問所を通り抜けられたら、魔光石を譲り受けた相手の名前を教えてやる! 約束だ!」
痩せ身の男、ボリスは軽快に二人の後をついて行く。
クリストフは咳払いを一つすると、もう一度ハットを深く被り直した。


