船の揺れがきつくなったと気付いたときには既にもう手遅れだった。波はあっとう間に高くなり、直ぐに立っていることさえ難しくなった。真っ暗闇の船室には船外からの海水が流れ込み、床中水浸しである。それに、軽い積荷や樽は揺れで転がったり、倒れたり、はたまた床上の海水を浮かんでは激しく揺さぶられていた。
更に悪いことに、今晩も予想通り、フェルデンはこの部屋へとやって来てしまっていたのだった。
甲板が騒がしくなり、出るに出られなくなってしまった朱音が荷の影に座ってじっと息を潜めて待っていたところ、フェルデンが通例通り蝋燭を片手に部屋へと入ってきたのだ。
彼に見つからないように、と身を小さくして蹲(うずくま)っていたのだが、間髪入れずに船が突然大きく揺さぶられ始めたのだ。当然のことながら、不意を食らった朱音自身も船室の壁に叩きつけられる格好になり、積荷の多くは崩れ、樽は床面をごろごろと勢いよく転がった。
「あっ!」
朱音は咄嗟に出てしまった声を止めることはできなかった。
「・・・誰かいるのか・・・?」
この揺れで、フェルデンは蝋燭を落としてしまったようで部屋には再び暗闇が訪れた。
しかし、ひどい揺れはおさまることはなく、一層強さを増している。
はっとして口を紡ぐが、フェルデンは暗闇の中に潜む誰かの存在に気付いていた。
「なぜ返事をしない・・・? 誰だ!?」
心の内で祖父の言っていたことを思い出し、こういう状況になってしまったことへの後悔を繰り替えしながら、無言でじっと揺れに堪えた。
(ああ、私のバカバカ! なんでお爺ちゃんの言ってたことをもっと早くに思い出さなかったの!? っていうか、そもそも、なんでフェルデンがここに来る理由を知りたいなんて思ったりしたの!?)
しかし、朱音はもっと肝心なことに気付かなかった。この部屋には多くの荷が積まれていることを。いくらバランス良く積まれた荷でも、これ程の揺れではあまり意味を成していないことも。
「!!!」
とびきりの大きな揺れが起きた。
更に悪いことに、今晩も予想通り、フェルデンはこの部屋へとやって来てしまっていたのだった。
甲板が騒がしくなり、出るに出られなくなってしまった朱音が荷の影に座ってじっと息を潜めて待っていたところ、フェルデンが通例通り蝋燭を片手に部屋へと入ってきたのだ。
彼に見つからないように、と身を小さくして蹲(うずくま)っていたのだが、間髪入れずに船が突然大きく揺さぶられ始めたのだ。当然のことながら、不意を食らった朱音自身も船室の壁に叩きつけられる格好になり、積荷の多くは崩れ、樽は床面をごろごろと勢いよく転がった。
「あっ!」
朱音は咄嗟に出てしまった声を止めることはできなかった。
「・・・誰かいるのか・・・?」
この揺れで、フェルデンは蝋燭を落としてしまったようで部屋には再び暗闇が訪れた。
しかし、ひどい揺れはおさまることはなく、一層強さを増している。
はっとして口を紡ぐが、フェルデンは暗闇の中に潜む誰かの存在に気付いていた。
「なぜ返事をしない・・・? 誰だ!?」
心の内で祖父の言っていたことを思い出し、こういう状況になってしまったことへの後悔を繰り替えしながら、無言でじっと揺れに堪えた。
(ああ、私のバカバカ! なんでお爺ちゃんの言ってたことをもっと早くに思い出さなかったの!? っていうか、そもそも、なんでフェルデンがここに来る理由を知りたいなんて思ったりしたの!?)
しかし、朱音はもっと肝心なことに気付かなかった。この部屋には多くの荷が積まれていることを。いくらバランス良く積まれた荷でも、これ程の揺れではあまり意味を成していないことも。
「!!!」
とびきりの大きな揺れが起きた。


